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レンタルオフィスに借地借家法は適用されるのか


これまで、ノマドワーカー(ノマド=遊牧民 遊牧民のように特定の作業場を持たず、好きな所を渡り歩きながら働く人のこと)を中心に人気を博していたサービスが、レンタルオフィスです。

しかし、コロナ禍などテレワークを推進する世間の動きにより、ノマドワーカー以外にもレンタルオフィスの需要が広がってきました。

需要が高まるにつれ、レンタルオフィス契約に関するトラブルも増加しています。
トラブルの一例としてあげられるのが、「運営会社から急に家賃の値上げを通知された」というものです。

従来の物件賃貸借契約においては、弱い立場にある借り主を守るために「借地借家法」が適用されます。
ところが、レンタルオフィスは特殊な形態であるがゆえに、「レンタルオフィス契約には借地借家法は適用されない」と運営会社から言われて値上げを迫られるケースが実際に発生しています。

このケースに関する、弊事務所の弁護士の見解は以下の2点です。

1:レンタルオフィスであっても、借地借家法は適用される
2:ただし、契約しているレンタルオフィスの形態によって左右される


上記のケースを考える上で重要なポイントは、
①レンタルオフィスの3つのタイプ
②借地借家法が適用される建物の意義
の2つです。

また、もし借地借家法が適用されるのであれば、賃料がどうなるのかも気になるところです。

この記事では、

・レンタルオフィスの3つのタイプ
・借地借家法が適用される建物の意義
・レンタルオフィス契約に借地借家法は適用されるか
・適用される場合の賃料について

の順番で説明していきます。

レンタルオフィスの3つのタイプ


そもそも、レンタルオフィスといっても様々なサービス形態があります。
その中でも特に一般的な3つのタイプについて説明します。

1:壁やパーテーションにより仕切られた個室タイプ
2:障壁を設けずに机と椅子を利用できるブースタイプ
3:バーチャルオフィス(建物使用は想定されておらず、住所、郵便物の転送、電話番号、会議室などを利用する)


まず1の壁やパーテーションにより仕切られた個室タイプについてです。多くのレンタルオフィスではプライベート・オフィスと呼ばれているのがこのタイプです。壁やパーテーションで空間が完全に切り取られており、セキュリティ効果が高いのが特徴です。

2のブースタイプに関しては、学習塾の自習スペースというとイメージがしやすいでしょうか。机ごとに仕切りやパーテーションで区切られており、その一区画を借りるのがこのタイプです。
個室タイプと比べて安価に利用できるメリットがある反面、周囲の電話の声が聞こえてしまったり、逆に自分が電話する声が周囲に丸聞こえになってしまうデメリットもあります。

3のバーチャルオフィスに関しては、物理的な事務所を構えずに事業を始める方などが利用するサービスです。
バーチャルオフィスを契約すれば、その住所を名刺やホームページに記載できます。また、法人の住所として登記できるプランもあります。
その他、郵便物の転送や電話代行などのサービスを提供するバーチャルオフィスもあります。

これらのうち、2,3のタイプのレンタルオフィスに関しては、借地借家法が適用となる「建物」(借地借家法2条)ではないと判断されます。よって、借地借家法が適用されることはありません。

しかし、1の個室タイプに関しては、借地借家法が適用となるケースがあります。

借地借家法が適用となる建物の意義


個室タイプのレンタルオフィスに借地借家法が適用となるかどうかを検証するためには、そもそも借地借家法が適用となる建物の意義について確認しなくてはなりません。

過去の裁判例(最判昭和42年6月2日民集21巻6号1433頁)では、

「建物の一部であっても、障壁その他によって他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものは、借家法一条にいう『建物』であると解すべき(一部抜粋)」

と判示されています。つまり、たとえ建物の一部であったとしても、壁などで周囲から区切られた空間を独占的・排他的に使用できる状況であれば、借地借家法が定める「建物」に該当するのです。

よって、四方を天井まで壁で囲まれているような個室タイプのレンタルオフィスには、借地借家法が適用されると考えられます。

レンタルオフィスが借地借家法適用になるか否か


借地借家法が適用されるかどうかは、契約書の名称で判断されるわけではありません。実際に賃借の対象となる目的物や、その使用形態によって判断されます。

一般的なレンタルオフィスに関する契約形態は、利用権契約であることが多いです。
しかし、個室タイプのレンタルオフィスに関しては、「建物」としての区画を独占的排他的に使用する代わりに利用料金を支払うというものであるので、法律的な性格としては建物の賃貸借契約と相違ありません。

利用権契約と銘打っていたとしても、本質は建物の賃貸借契約に他ならないのです。

また、レンタルオフィスを契約すると、各種サービス(郵便転送や電話代行など)が付帯することが多いです。
これらは、建物の賃貸借契約に付帯するサービスであるため、建物の使用収益の対価への支払いというレンタルオフィス契約の基本的な法的性格の判断に影響は与えません。

よって、レンタルオフィスの利用料以外に様々なサービスが付帯していたとしても、建物の賃貸借契約であることに変わりはありません。

借地借家法が適用される場合の賃料について

レンタルオフィス契約に借地借家法が適用されるのであれば、借地借家法に従わない賃借人に不利な条項については無効となります(借地借家法30条)。

たとえば、契約期間満了の1年前から6ヶ月前までに更新しない旨の通知がなければ、以前の契約と同じ条件で更新したものとみなされます。
もし、契約の自動更新をしない場合には、正当な理由がないと認められません(借地借家法28条)。

さらに、これまでの契約と同じ内容での更新となるので、急に賃料の変更をすることもできません。今までと同じ賃料での契約となります。

よって、レンタルオフィス運営者が「このレンタルオフィス契約には借地借家法は適用されません。よって、家賃の額を変更します。」と言ってきたとしても、無効になるケースがあるのです。

不動産トラブルは弊事務所へご相談を


レンタルオフィスは、コロナ禍を受けて需要が急激に伸びてきました。需要が急激に伸びるということは、トラブルの件数も当然増えていきます。

トラブルの当事者間で話し合いをするだけでは、なかなか解決まで至らないこともままあります。
そんなときは、法的知識を持ち、豊富な事件解決経験がある専門家に頼ることをおすすめします。

弊事務所では、不動産トラブルの相談をお受け付けしております。

毎月第2・第3土曜日の10時~18時には、無料相談会を実施しております。

また、オーナー様からのご相談は、常時無料でお受け付けいたします。

どうぞお一人で悩まずに、気軽にご連絡ください。

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